6月12日に迫ったサッカー・ワールドカップを前にして、ブラジル各地で抗議デモが相次いでいる。巨額公費投入に反対し、住宅・教育など社会サービスを優先せよという要求だ。15日にはサンパウロ、リオデジャネイロを含む17都市で抗議行動が行われた。
東部の都市レシフェではスーパーの略奪、車荒らしが横行した。また13、14日にはニューヨークやロサンゼルスなどの在外ブラジル公館の現地職員が賃上げなどを要求してストを行い、ビザ業務に支障が出た。
4月には第3の都市サルバドルで賃上げを要求する州警察が15日から17日までストに入り、その間に殺人や略奪が多発した。連邦政府当局は「平和デモの権利はあるが、略奪や暴行は許されない」と呼びかけている。
ブラジルは人口約2億人、1人当たりのGDP1万2000ドル超、中南米最大の市場であり、労働党(PT)政権が発足した03年の時点で6600万人だった中間層は14年には1億1800万人に増大した。自動車販売台数は昨年380万台、世界第4位。最大の貿易相手国は輸出・輸入ともに中国であり、次いで米国。経済安定と改革重視政策から近年、国際的信用は高まり、BRICSの一国として注目されつつある。
ブラジル労働党は軍政下の80年に結成、02年の大統領選挙で6割強の支持を得てルラ政権が成立した。以来、不平等・不正・貧困と闘う社会政策を実施、「飢餓ゼロ」に取り組んだ。今年10月には大統領選挙が予定されている。(富山)
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