昨年6月の国民投票で、英国民はEU=欧州連合離脱を決めた。Brexit=ブレクジットという新語も生まれた。EUに対する諸国民の同様な反応、不信は底流として存在していた。
冷戦終結後の92年2月、オランダのマーストリヒト市で「欧州連合条約」(マーストリヒト条約)が調印された。しかし、同年6月の国民投票でデンマークが条約批准を否決した。小国の独自性、平和に対する中立性が認められるか、国民の間に不安が高かったのである。05年のフランスとオランダの国民投票では「欧州憲法条約」が否決された。「自国の雇用」「国家主権の喪失」に対する反応であった。
EUは全加盟国の同意を条件としているため、基本条約を修正、「リスボン条約」(07年12月)として調印され、09年に発効した。ユーロ導入にはデンマークが再び国民投票で否決(00年)、「司法・内務協力分野の留保撤廃」も否決(15年)されている。
結局、欧州「連合」は通貨同盟・共通の外交安保政策に加盟しなくてもよいというオプト・アウト(=選択的離脱)を認める形で機能している。
諸国民の暮らしの現実はどうか? 経済停滞、失業・貧困・格差拡大、増税、国防費増と米主導戦争政策遂行、テロ事件多発、移民・難民の大量流入に直面している。「労働力の自由な移動」は労働権への攻撃であった。緊縮財政策の下で年金・医療・教育は悪化の一途である。欧州中央銀行は大金融機関の救済はするが、各国の財政赤字には制裁で応えている。
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