京大原子炉実験所助教の今中哲二さんら脱原発研究者が参加したシンポジウムが7月9日、福島県飯舘村で開かれ、10日には南相馬市小高地区で放射線量の測定など現地調査が行われた。
シンポジウムは放射線、環境、衛生、生物、公害など諸分野の研究者の報告と討論があり、原子力ムラに与しない研究者の熱心な討論が続いた。また、施設の庭では稲の生育と放射線の関係を調べる実験が行われていた。
南相馬市の立ち入り制限区域は4月に3つの区域に再編成。小高地区は福島第一原発20キロ圏内で居住制限区域。現地調査には、研究グループと元居住者でつくる「相双の会」(避難者の会)の代表代行の國分富夫さんら10名以上が参加した。
一行は14カ所で1メートルの空間放射線量を計測、畑の土などをサンプル採取した。最初に計測した場所は舗装道路で2・1マイクロシーベルト、民家の庭で1・6マイクロシーベルト。車で移動するにつれて放射線量は高くなった。12カ所目の民家周辺では5・5マイクロシーベルトという高い線量が計測された。
小高地区を車で移動中、車窓に見える畑は今や荒地と化し、雑草が生い茂っている。ところどころでお年寄りが農作業をしている。國分さんは「あんなにアブナイと言っているのに」とつぶやいた。しかし、「お年寄りだからこれしかないのだ」とも付け加えた。
1年間に放射線量を浴びる許容限度は毎時0・23マイクロシーベルト。福島駅前に設置された線量計は、7月10日に0・87マイクロシーベルトを示していた。だが、通行人は何事もないかのように通り過ぎた。色も匂いも、形もなく、慣れれば日常の生活に差し障りがない放射線。放射線障害が晩発性となれば証明は困難だ。國分さんたちは故郷を破滅させた東電を相手に、損害賠償裁判を準備している。(高橋)
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