東電は一昨年に、我々の求めた10万トンタンカー一隻の調達さえ怠って、大量の汚染水を海に放水してしまった。「緊急事態」を理由に総量規制値をはるかに超える放射性物質を、諸外国に予告さえせずに放流して、国際的な顰蹙(ひんしゅく)を買った。
今はまた、原子炉建屋を地下水から遮蔽するべきという、かねてからの我々の主張を無視して、何本かの井戸を掘るなどという糊塗策を試みている間に、事態はいよいよ重大になっている。
福島第一原発港湾内でとれる魚の汚染レベルは今年になってから急速に上がっている。東電は、2月21日に捕獲したアイナメから、過去最大値となる1キログラム当たり74万ベクレルの放射性セシウムを検出したと、3月15日に発表した。 国が定める一般食品の上限値1キログラム当たり100ベクレルの7400倍にもなる。1キログラム食べれば11ミリシ―ベルトの内部被曝となる。これより少し前のアイナメからは、同51万ベクレルのセシウムを検出している。
しばらく前のメバルからは同10万1000ベクレルを検出した。この2月までは、昨年8月に第一原発から約20キロメートル離れた福島県南相馬市沖で採取されたアイナメの同2万5800ベクレルが最高だった。しかも魚によっては青森県沖や茨城県沖や銚子沖まで汚染は進んでいる。
原発の北に約10キロ離れた浪江町の沖合2キロで採取した海底土の放射性物質の濃度が、昨年11月から12月にかけて、100倍近くも上昇したとも先日発表された。
循環冷却系には建屋地下に日に400トン以上もの地下水が流入して、高濃度汚染水を増やし続けている。セシウムの除去装置は通しているが、他の核種は残ったままの汚染水が、貯蔵タンクに30万トンと溜り、敷地に溢れそうである。どこかから海に流失しているかもしれない。
ストロンチウム等も除去できる装置を建設中だが、それらを吸着した高レベル廃棄物を収める容器で頓挫している。この浄化系が成功しても、トリチウム(三重水素、半減期12・3年)からなる水は除去しようもない。この放流が許されるはずもない。
さらに懸念されることには、溶融燃料がすでに格納容器の底をメルトスルーしているかもしれない。これを地下水が舐めながら海底に流れ出ていても不思議はない。
建屋地下への流入を止めるためにも、また溶融燃料を直接地下水で流失させないためにも、かねて我々が指摘してきたように、建屋の周りを地下水脈から遮蔽することが緊急に必要だ。(原野人)
|