東電福島第一原発事故は、発生から2年半が経過しようとしているのに大量の汚染水流出が続くなど、収束の見通しは全く立っていない。福島県を中心に原発事故被害者は、先の見えない状況の中で経済的にも心理的にも追い詰められている。
昨年6月、全会一致で成立した「原発事故子ども・被災者支援法」は、被害者一人ひとりの選択する権利を保障し、幅広い支援策を講じることを定めているが、未だに実施されていない。
また、原発事故の被害に対する損害賠償の請求権が来年3月に時効消滅してしまうという問題があり、現在の法制度では救済されない被害者が大量に出ることが想定される。このため、損害賠償請求の時効問題を抜本的に解決するための「特別法」の制定が焦眉の課題となっている。
こうした問題を解決するため8月26日、東京・永田町の参院議員会館で「原発被害者の救済を求める全国運動」キックオフ集会が開かれた。
「全国運動」は福島県内の被害当事者や支援者、弁護士など幅広い連携で立ち上げられたもので、国に対して支援法の実施や、損害賠償請求の時効問題の解決を求めて500万を目標に署名運動を行い、11月には国会と政府に提出することにしている。また、9月21日に福島市で「全国集会」を開く。
キックオフ集会では共同代表の佐藤和良いわき市議が、「原発事故被害は史上最大の公害問題だ。当事者企業なり、責任のある国が賠償を値切るなどということはあってはならない。今の法律では、ADR
(裁判外紛争解決手続)に申し立てておかなければ、消滅する。ADRに申し立てるということ自体、県内、県外を問わず難しいことだ。そうしたことを含めて、現状では救われない人が圧倒的だ」と訴えた。
また、日弁連の東日本大震災原子力発電所事故等対策本部副本部長の海渡雄一弁護士は時効問題に必要な特別措置法について、@権利行使が可能となった時から時効期間を起算、A本件の損害賠償請求権には3年の消滅時効(民法724条前段)は適用しない、B特措法の施行後5年経過時点で更なる期間延長を含めた見直しを行うことを明記、C通常の債権と同じ10年間の権利行使を認める、D事故後一定期間経過後に顕在化する損害については、それが明らかになった時点から時効期間を起算と説明した。
郡山市から静岡県に避難している長谷川克己さんは当事者として、「子ども被災者支援法が実施されたからといって、被曝者が抱えている問題がすべて解決するということはない。しかし、私たちが子ども被災者支援法にかける望みは、私たち一人ひとりのあるべき権利を確認する、獲得すること」と訴えた。
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