東電福島第一原発事故の被害を被り福島県から神奈川県内に避難している人々のうち12世帯27人が3月10日、国と東電に慰謝料など約7億7500万円の損害賠償を求める訴えを横浜地方裁判所に起こした。昨年9月と12月に続く「福島原発かながわ訴訟」の第三次訴訟で、原告は35世帯93人になった。訴えは「東電は津波被害を予見できたのに、必要な対策を取らなかった過失がある。また、国は事故を防ぐための規則権限の行使を怠った責任がある」というもので、1月29日に第一回口頭弁論が行われた。その日は原告3人が被害の実情を訴え、弁護団が「被害者の人間の尊厳を取り戻す完全賠償を」と陳述した。これに対し、国・東電は「事故は想定外の津波によるもの」「低線量被曝を理由とする避難には合理性がない」などとする答弁書を提出、全面的に争う姿勢を示した。今回の提訴について、東電は「訴状が届いていないが真摯に対応していく」とコメントした。(神奈川・吉田)
国は町任せにしている
弁護団によると、震災3年前日の3月10日に東京、山形、新潟、群馬など7都県でも同様の追加提訴や新たな提訴があった。
原告のIさんが決意を述べた。
「ふるさと福島県富岡町は、現在も全域で立ち入り、居住を制限されている。町は復興に向け、県内外で懇談会を開いている。見通しが立たない帰還時期や放射線量の影響を巡って高ぶった住民の感情が、町職員にぶっつけられる場面を何度も見てきた。住民の気持ちはよくわかる。
遠く離れていても町の情報を届けてくれる職員に救われている。同じ被災者という立場にもかかわらず、摩擦が生まれるのが悲しい。国が納得できる説明をしないで、町任せにしているせいだ。
今は妻と父親と民間の借り上げ住宅に暮らしている。自宅にいつ戻れるのか分からない。9日には約4カ月ぶりに自宅に戻った。台所に、3年前の昼食時の食器がそのまま残っていた。時計だけが時を刻んでいた。
これだけの事故を起こしたのだから、責任の所在を明らかにしなければならない」
Iさんら原告を支えるために、1月29日に県内外の市民や学者・文化人が呼びかけ「福島原発かながわ訴訟を支援する会」(略称・ふくかな)を結成。裁判の傍聴や会員拡大を呼びかけている。
横浜市で「追悼の夕べ」
第三次訴訟を提訴したあと10日夕、横浜市内の大通り公園で「追悼の夕べ」が行われた。原発事故で県内に避難している被災者と支援者約150名が集まり、キャンドルを手に黙とうを捧げた。
実行委員長で富岡町から避難している坂本建さんは「あれから3年、避難生活で家族が離れ離れになり、葬式があげられなかった人もいる。この現実は次世代に引き継いでいかねばならない。私自身、避難者という立場で何ができるのか考え続けたい」と挨拶した。
その後、ウクライナで被災して日本で暮らすカテリーナさんのバンデゥーラの演奏と歌で祈りを奉げた。
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