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第T部 私たちは何をめざすか |
1.資本主義に未来はない
いま新自由主義の姿をとって弱肉強食の資本主義が荒れくるう世界に、新たな社会主義のルネッサンスが始まっています。
資本主義は、20世紀に2度の世界大戦をはじめ幾多の戦争をもたらして、1億を超える人命を奪い、はかりしれない財産を焼き払いながらも、21世紀に生き延びています。
資本主義は主要な生産手段が一握りの資本家階級に私有され、人間の労働力をも商品化し、買われない商品としての失業を常に生みだす、非人間的な社会です。資本の利潤のためには、人間の命や健康を惜し気もなく奪い、自然環境を破壊してゆく社会です。
近年はME(マイクロエレクトロニクス)革命によるコンピュータ化、ロボット化によって、多くの人びとが職場から駆逐されました。さらにいま、IT(情報技術)革命と国境を越えた資本の合併・吸収や移転による産業の空洞化と新自由主義的「構造改革」は、多くの失業を生み、国の内外で貧富の格差をはてしなく拡大しています。今日、先進資本主義諸国の生産力はきわめて大きくなり、あり余る富が生産される時代になっているのに、世界のいたるところに生活苦が増大しています。
資本主義は、地球の温暖化や砂漠化、環境汚染、新たな疾病などをもたらしながら、それらを解決することもできません。一方でバイオテクノロジー等の先端技術の資本主義的利用は、人間の尊厳と安全を著しく損なおうとしています。
封建制を打ち倒した生長期の資本主義とは異なり、今日の資本主義は歴史的進歩性をすっかり失っているのです。グーバル化した大競争が際限ないリストラを強制し、弱肉強食、失業や自殺の増加、雇用の不安定化、巨大独占資本支援のための財政赤字と大衆増税と福祉切捨て、途上諸国における困窮の蓄積等々の傷口は、ますます拡大していきます。
このような根元的で長期的な「解決不能」の危機に直面している米欧日などの資本主義諸国は、大国と巨大多国籍資本の支配権を脅かすものは許さないと、軍事力、経済力、科学技術にモノをいわせた抑圧、支配、介入などの戦略を展開し、新たな戦争を引き起こすなど、「力」で矛盾を封じ込めようとあがいています。アメリカ的民主主義や西欧的社会民主主義には、日本に比べて進んだ側面もありますが、総じて資本主義的民主主義の限界をあらためて示しています。
社会民主主義は大資本の動向をあれこれ規制するにとどまり、大資本の支配つまり資本主義制度そのものをなくすることは目標としません。しかし失業と生活苦を生み、自然と人間を荒廃させ、残虐な戦争をくりかえす資本主義に未来への希望は託せません。
人類が、人間相互の、また自然との共生を実現するには、もっと人間的な新しい社会に生まれ代わらなくてはなりません。大資本の利潤追求が中心となって人びとを支配する社会の不公平で不平等な経済秩序を変革する新しい社会です。人びとが平等に社会の主人公となる新しい社会です。いかなる意見や利害の対立も、戦争や武力による威嚇、武力の行使によらず、話し合いと交渉によって平和的に解決し、核兵器を廃絶し、大幅軍縮を実現する社会です。資本主義から社会主義への転換は、このような人類的課題であり、人類共通の事業とならなければなりません。
それは特定の歴史的条件のもとで、社会主義の基本を逸脱したために崩壊したソ連・東欧のような、古い社会主義ではありません。人類が実践した様々な社会主義の試みの成果からも、また失敗からも学び、マルクスやエンゲルスによって基礎づけられた社会主義の理論を 21世紀に適用した、人間的で民主的な新しい社会主義です。
戦争と失業に反対し憲法を生かす共同戦線を基盤にしてやがて樹立される連合政府は、21世紀において内外情勢の進展、中期政策の実行、国民意識の成長、共同戦線の量的・質的発展とともに、新しい社会をつくる安定して持続的な政権へと発展することになります。資本主義から社会主義への必然的発展法則は、このような日本の諸条件にそった私たちの主体的実践によって、国際連帯の中で人類共通事業の一翼を担う形で実現されるのです。
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