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第U部 私たちはどんな時代に生きているか |
(7) 資本主義大国の戦略と国連の地位
米国を盟主とする西欧諸国と日本などは、「社会主義陣営」の崩壊・解体を踏まえ、世界全体を自分たちで共同管理する「新国際秩序」を構想しています。200ヵ国に迫る諸国が加盟する国連も、その戦略に沿う場合には利用するが、障害になる場合には無視して独自に軍事行動、軍事介入を行うという「新戦略」を打ち出しました。
その柱が東半球では 96年以来の日米新ガイドライン体制であり、西半球では 99年のユーゴ空爆とNATO新戦略の採択、欧州独自のEU軍の創設などです。双方に共通する「周辺事態への対処」という概念は、米欧日の利害にかかわる地域には、どこでも共同軍事作戦を遂行するという宣言です。
2001年秋の米国への「同時多発テロ」に対して、米国は国家による武力攻撃に対して限定的にのみ許容されている「自衛権」を発動し、NATOも「集団的自衛権」を行使しました。個人や集団に自衛権を行使し、「かくまった」という理由で「テロの共犯」として一国の政権を武力で打倒したのは、国際法も無視した公然たる武力による世界支配への道です。日本もこれに自衛隊を派兵して参戦したのは、憲法9条に対する公然たる反旗にほかなりません。国際的に形成された「反テロ同盟」も、実際は各国の利害の打算と思惑の結果です。一方で、米国はイスラエルのパレスチナ占領と武力攻撃を事実上容認・擁護して、自分の戦略や利害に都合のいい「二重基準」を押し通しています。アフガニスタンやパレスチナの民衆が戦乱と圧倒的な武力攻撃で受けた多大な犠牲や苦痛、世界中に生み出された大国への憎しみは、武力では何も解決しないことをあらためて証明しました。
(8) 再び資本主義に対抗して
こうして世界は、一方で巨大な富と軍事力が集積し、他方で貧困と失業と債務が累積するという方向に再び分裂を強めています。
社会民主主義勢力は、 70〜80年代には新自由主義に対抗し、労働者や女性、福祉や環境、少数者の権利の向上などに一定の役割を果たしましたが、政権につくと新自由主義的政策と軍事的覇権政策を継承、推進する誤りも犯しています。
左右の政治勢力が進めるEU統合・拡大とグローバリゼーションは、貧富の格差拡大、失業、福祉切り棄てなどを生み、敵を「EU」、「移民」に仕立てた極右を成長させています。失業、貧困と飢餓、地域紛争、環境問題、食糧・水問題、福祉問題など、いずれも市場争奪の競争原理では解決できないことは明らかです。
今日、世界規模の弱肉強食の資本主義に抗し、ソ連型社会主義や社会民主主義の過ちをくりかえさず、すべての人が平和に豊かに暮らせる新しい社会を構築しうる理論と運動が求められています。これこそが、世界史的な転換期に直面した私たちの任務です。 |
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